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不動産売却後もそのまま住める「リースバック」の仕組みとトラブル5選

リースバックのメリット・デメリットから失敗を防ぐための注意点まで

不動産を購入する際、多くの人が20年、30年といった長期のローンを組みます。しかし、変化の激しい現代社会では、購入当初に想定していた生活環境から大きく変わってしまうこともありますよね。

生活環境の変化から、大切な資産を売却してでも現金が必要になることもあると思います。

この記事を読んでいるあなたも、リースバックの不動産売却による資金調達を検討しているのではないでしょうか。

リースバックとは、不動産を売却後もそのまま住み続けることができる売却方法の1つです。「すぐに現金が必要、でもマイホームを手放したくない…」そんな人はリースバックによる不動産の売却が向いているかもしれません。

ただし、リースバックの仕組みは単純ではないため、時にはトラブルが生じることもあります。

ここでは、リースバックによる不動産の売却で失敗しないために、仕組み、メリット・デメリット、起こりやすいトラブルについての解説です。

今は読んでいる時間が無い!という方、この記事の要点はこちら
  • 不動産のリースバックとは、不動産売却後もそのまま住める売却方法の1つ
  • リースバックで不動産を売却すると、所有権が買い手に移転する
  • リースバックでそのまま住み続けたい場合、買い手と賃貸借契約を結ぶ
  • リースバックにはさまざまなメリットがあるが、トラブルにも注意
  • リースバックとリバースモーゲージは、異なる資金調達の手段

1. 不動産売却後もそのまま住める「リースバック」とは?

リースバックとは、マイホームなどの資産を第三者に売却し、リース契約を締結することで売却した資産をそれまでと同じように利用できる売却方法です。

リースバックでマイホームを売却する場合、売却後に買い手と賃貸借契約を締結することで、そのままマイホームに住み続けることができます。

ここでは、リースバックによる不動産売却の仕組みについて解説します。

1.1. リースバックによる不動産売却の仕組み

リースバックによる不動産売却では、リースバック事業者などの買い手と売買契約・賃貸借契約という2つの契約を締結するケースが一般的です。

たとえば、あなたがリースバックを利用してリースバック事業者へマイホームを売却するとしましょう。まず、リースバック事業者に不動産を売却して、売買代金を受け取ります。

この時、不動産の所有権はリースバック事業者へ移転するため、あなたは売却した不動産の所有者ではなくなります。

次に、リースバック事業者と賃貸借契約を締結。この段階で、あなたとリースバック事業者は「売主」と「買主」ではなく「借主」と「貸主」の関係になります。

そして、あなたがリースバック事業者(貸主)に対して毎月家賃を支払うことで、売却したマイホームにそのまま住み続けることができる仕組みです。

1.2. 将来的に、買い戻せる場合もある

リースバックで不動産を売却する場合、売買契約締結時に「再売買予約権」という権利を付帯しておくと売却した不動産を将来的に買い戻すことができます。

※再売買予約権ではなく、買戻し特約や他の呼び方をすることもあるため、契約時に確認しましょう。

「一時的に現金が必要だけど、将来的にマイホームを買い戻したい」

このようなケースでは、リースバックによる不動産の売却が有効的な手段の1つです。

2. どんな時に利用する?リースバックの活用事例

それでは、リースバックは具体的にどのようなケースで活用できるのでしょうか。以下に具体的な活用事例をまとめたので、参考にしていただければと思います。

【リースバックの活用事例】

  • 老後や事業、教育資金の調達のためにマイホームを売却したい。でも、本当は売却後もマイホームに住み続けたい。
  • マイホームを売却したことを周囲に知られたくない。
  • 引っ越しで子どもの学区や生活環境を変えたくない。
  • 相続財産として不動産を残すよりも、現金化してしまいたい。
  • 住宅ローンの返済が苦しい…早く返済しておきたい。
  • 住み替えを検討しており、仮住まいのための費用や引っ越しの負担を軽減したい。

3. 不動産の売却でリースバックを利用するメリット

不動産の売却でリースバックを利用するメリットは、以下の通りです。

【リースバックを利用するメリット】

  • マイホームを売却しても、そのまま住み続けられる
  • 周囲に知られることなく不動産を売却できる
  • 固定資産税などの納税義務がなくなる
  • 売買代金で住宅ローンを完済すれば、返済負担がなくなる
  • 住み替え前の引っ越しの手間や、仮住まいの費用負担を軽減できる
  • 将来的にマイホームを買い戻せる場合がある
  • 短期間で現金化できる

リースバックは、不動産を売却してもそのまま住み続けることができるため、それに付随したメリットが多数あります。また、不動産を売却した後は所有権が新しい所有者へ移転するため、固定資産税や住宅ローンと言った、不動産を所有している上でのわずらわしさからも解放されます。

再売買予約権を設定しておけば、売却したマイホームを将来的に買い戻すことも可能です。「マイホームに愛着があるものの、今はどうしても現金が必要」という人には大きなメリットでしょう。

さらに、リースバックの売却先はリースバック事業者であるケースが多いため、一般的な不動産の売却よりも短期間で売却できます。すぐに現金が必要な人にとって、大きなメリットです。

不動産の売却にかかる期間はどれくらい?

4. 不動産の売却でリースバックを利用するデメリット

不動産の売却でリースバックを利用するデメリットは、以下の通りです。

【リースバックを利用するデメリット】

  • 売却価格が相場よりも安くなる場合がある
  • 毎月家賃の支払いが発生し、賃料は相場よりも割高なことが多い
  • 売買代金でローンを完済できない場合、利用できない可能性が高い
  • 契約によってはずっと住み続けられない、買戻しできないことがある

上記のデメリットは、どれもリースバックを利用する際に注意しなければいけない大切なポイントになります。大切なことなので、起こりやすいトラブルとして次の章で詳しく解説します。

5. 【要注意】リースバックでありがちなトラブル5選

「現金が手に入り、不動産を売却してもそのまま住める」

これだけ聞くと、リースバックは売り手にとって有利な取引手法に感じるでしょう。しかし、リースバックの仕組みは単純ではないため、トラブルも少なくありません。

リースバックによるトラブルの原因で多いのは、売り手とリースバック事業者の認識の違いから生じるケース。起こりやすいトラブルから、注意点を確認しておきましょう。

5.1. 想定よりも売却価格が安く、ローンを完済できない

リースバックを検討している人の中には、住宅ローンの返済に困窮している人もいると思います。リースバックを利用すれば現金が一括で手に入るため、残債が少ない場合はローンを完済しつつ手元にお金を残せます。

しかし、リースバックで不動産を売却する場合、一般的な不動産の取引価格よりも安くなるケースが多いため注意が必要です。

あくまでも目安ですが、売却予定の不動産の市場価格×70%〜90%が最大価格となることが多くなっています。たとえば、市場価格が1000万円の不動産の場合は、700万円〜900万円が売却価格の最大です。

金融機関からマイホームのための融資を受ける際、不動産が担保となっていることが一般的です。その場合、不動産には抵当権が設定されています。抵当権は、ローンを完済しなければ抹消できないため、売買代金でローンを完済できなければリースバックを利用できない可能性が高いでしょう。

※抵当権:ローン契約者の返済が滞った場合、金融機関が不動産を競売にかけるために設定する権利です。

【不動産売却】抵当権がついている家や土地を売る場合

5.2. 賃料が高く、支払いが困難

売却後もリースバックで売却した不動産に住み続ける場合、毎月賃料の支払いが発生します。この際の賃料は、売却価格に対して〇%と設定されるケースが一般的なため、売却価格が高いほど賃料も高くなる仕組みです。

そのため、賃料が周辺相場よりも高くなる可能性があるでしょう。

資金調達のためにリースバックを利用する場合、必要資金が高額でなければ、あえて低い金額で売却することも選択肢の1つです。

5.3. 定期借家契約で契約を更新できない

リースバックのメリットの1つは、売却した不動産を将来的に買い戻せること。しかし、買い手と締結する賃貸借契約が「定期借家契約」の場合は注意が必要です。

不動産を賃貸する際の契約には、「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」があります。前者は一般的な賃貸物件で利用される契約で、更新を前提とした契約です。普通賃貸借契約では、貸主が更新を一方的に拒絶することはできません。

一方、定期借家契約とは予め期間を定めておき、更新をしない契約です。契約満了後も住み続けたい場合、更新ではなく再契約をします。ただし、定期借家契約では貸主が再契約を締結する義務はないため、契約期日が到来した場合、契約を終了させることも可能です。

買い戻すことを計画していたのに、定期借家契約を再契約できず、不動産を手放すはめになってしまうリスクがあるでしょう。

将来的に買い戻すことを検討している場合、普通賃貸借契約を締結すること、リースバックの契約時に買い戻す際の取り決めを明確にしておくことが大切です。

5.4. 資金を準備できずに買い戻せない

リースバックで売却した不動産を買い戻す場合、売却価格よりも高くなるケースが一般的です。買い戻し価格の目安は売却価格×1.1倍〜1.3倍。売却価格が2000万円だった場合の買い戻し価格は、2200万円〜2600万円が目安となります。

買い戻す際の価格が高くなる理由は、買い手が購入時の金額に購入時・売却時にかかる諸費用、場合によっては利益を上乗せするためです。

リースバックを契約する際に買い戻し価格を定めておくことも可能なので、契約時に内容をしっかりと確認することが大切です。

5.5. そもそもリースバックを利用できない

状況によっては、そもそもリースバックを利用できない場合もあります。たとえば、以下のケースが挙げられます。

  • 売却価格が必要資金に届かない
  • 売却後に賃料を支払える見込みがない

先述の通り、リースバックは一般的な売却よりも売却価格が低く、賃料相場よりも賃料設定が高くなる傾向です。上記のケースでは売り手・買い手が満足する取引ができないため、リースバックの利用は難しいでしょう。

6. リースバックとリバースモーゲージの違い

リースバックと勘違いされることが多い資金調達の方法に、「リバースモーゲージ」というものがあります。

リバースモーゲージは、リースバックと同じようにマイホームに住み続けながら資金調達できる方法ですが、不動産を売却せずに担保にするといった点で全く異なります。

以下の表は、リースバックとリバースモーゲージの違いをまとめたものです。

【リースバックとリバースモーゲージの違い】

リースバック リバースモーゲージ
マイホームでの生活
不動産の取り扱い 売却する 担保にする
所有権の移転 ×
資金調達の可否 (現金の性質) 〇 (売買代金) 〇 (借入金)
固定資産税・都市計画税の納税義務 ×
対象年齢 制限なし 65歳以上など高齢の方が多い
将来の不動産の取り扱い 買い戻せる可能性がある 借入金返済のため売却する

どちらも資金調達できる点は同じですが、リースバックによる資金は資産を売却して得られるもの、リバースモーゲージによる資金は将来返済する義務があるものです。

それぞれの特徴を理解して、自分の目的に合った手段を選ばなければ後悔する原因になるでしょう。

リースバックは、将来的に不動産を買い戻せる性質があるため、若年層にも向いている方法です。一方、リバースモーゲージは高齢の方が老後資金を調達するために利用するケースが多いです。

不動産の売却等による資金調達を検討している人は、ご自身に合った手段を検討しましょう。

7. まとめ

リースバックによる不動産の売却は、売却後もマイホームに住み続けられる便利な方法です。しかし、仕組みが単純でないことから、さまざまなトラブルが生じる場合があります。

リースバックによる不動産の売却を検討している人は、しっかりと契約内容や仕組みを理解しておくことが大切です。

  • 不動産のリースバックとは、不動産売却後もそのまま住める売却方法の1つ
  • リースバックで不動産を売却すると、所有権が買い手に移転する
  • リースバックでそのまま住み続けたい場合、買い手と賃貸借契約を結ぶ
  • リースバックにはさまざまなメリットがあるが、トラブルにも注意
  • リースバックとリバースモーゲージは、異なる資金調達の手段
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