修繕時期と税務上の扱い
『修繕』。賃貸オーナーの関心事の中では大きいところなのですが、『いつ』、『確定申告はどうする』といったところが漠然としているのではないでしょうか? 今回は、大まかではありますが修繕の「時期」と「税務」の目安をご紹介し、適宜修繕を行うことの必要性についてお話します。
老朽化アパートがひきおこす悪循環
賃貸住宅でも毎日の暮らしやすさや快適さが重要視されています。 今いる入居者の満足を高めることができれば長く住んでもらうことができ、空室になったとしても次の入居につながってアパート経営を安定させることにつながります。 しかし、修理・修繕を怠ると次のような悪循環に陥り、不安定な経営を繰り返すことにつながりかねないのです。
(1)修理・修繕がおざなりになる。(2)古くて建物に手が加えられていないので家賃が上げられない、もしくは下がる。
(3)収入が減少し、修理・修繕ができない。
また、古貸家に伴うリスクも同時に抱え込むことになります。古貸家に伴うリスクは次のものがあげられます。
(1)災害時の損害賠償リスク
『通常の維持・管理をしていれば通常おこりえない事故』であれば、その所有者が損害賠償責任を負います。 たとえば、そんなに大きくない地震がおこり、修繕しておけば通常落ちないような建物設備が落下し、入居者や通行人が怪我をした場合などが考えられます。
(2)家賃未納リスク
家賃を下げることにより、収入が不安定な入居者が借りる可能性が考えられます。
(3)空室リスク
入居者のクレームや不満足を引き起こし、退室する恐れもあります。 ひとたび空室になると、入居募集をしてもなかなか入居者がつきにくくなり、長期間に渡り部屋が空いてしまいます。 そうならないためにも、日ごろからこまめに修理・修繕を行い、維持していきたいものです。
修繕の時期の目安は?
そうはいっても、「どんな修繕をしなければいけないのか?」、「修繕が必要な時期は?」など、ご不安になるオーナーも多いことと思います。 そこで、長期的なスパンでおこなう修繕時期の目安をあげてみます。 ただしここであげる修繕周期はあくまでも目安です。建物規模・周囲の環境・使用状況によって大きく異なる場合があります。
修繕項目 | 修繕内容 | 時期 | |
---|---|---|---|
部位 | 部材 | ||
屋根 | 化粧スレート板葺 | 取替え | 20〜25年 |
金属板葺 | 取替え | 25〜30年 | |
外壁 | コンクリート・モルタル塗り | 補修・塗装 | 15年 |
タイル張り | 補修 | 10〜15年 | |
バルコニー | 手すり・物干し(金属) | 取替え | 25〜35年 |
外部建具 | 玄関扉 | 取替え | 25〜35年 |
アルミサッシ | 取替え | 30〜40年 | |
給排水設備 | 給水管 | 取替え | 25〜30年 |
配水管 | 取替え | 30年〜 | |
外溝 | 金属性柵 | 取替え | 20年〜 |
舗装 | ― | 30年 |
税務上の修繕費
修繕費は不動産所得の計算上必要経費となります。しかし税務上での修繕費は一般に考えられている修繕費と扱い方が少し違います。 税務上では『修繕費』と、「修繕によりその建物の価値が増加」したり「寿命が延びた部分がある」場合の『資本的支出』の2種類に分けます。
修繕費は必要経費に算出しますが、『資本的支出』は減価償却費の対象となります。 明らかに修繕費、資本的支出といえるものは別ですが、明確にどちらなのかを判断できるものではないですよね。 そこで税務上では修繕費の判断基準を次のように設けています。
(1)小額または周期の 短い費用 |
次のいずれかに該当する場合は全額修繕費 【1】一の修理のために要した金額が20万円未満 【2】その修理がおおむね3年以内の周期で行われるもの |
---|---|
(2)形式基準による 修繕費の判定 |
一の修理、改良等のための費用が修繕費か、資本的支出かが明らかでない場合、次のいずれか基準を満たせば修繕費としての処理が認められる。 【1】その金額が60万円に満たない場合 【2】その金額がその修理に係る固定資産の前年12月31日における取得価格のおおむね10%相当額以下である場合 |
(3)修繕費と資本的支出の 区分の特例 | 一の修理、改良等に要した金額のうち、修繕費か資本的支出かが不明の金額がある場合、継続適用であれば次の処理が認められる |
また、設備の減価償却期間は税法上15年です。 平成10年4月1日以降に取得した建物の減価償却方法は『定額法』のみですが、建物本体以外の付属設備、構築物、備品など建物本体以外の部分は『定率法』を選択適用することができます。
※建物本体を平成10年3月31日以前に取得した場合、本体の減価償却について定率法の適用は可能です。 『定率法』を適用することにより、減価償却費を増大させることも可能です。定率法を選択適用する場合は、次の手続きを行ってください。
(1)賃貸経営を始める場合
減価償却方法の「選択届出書」を不動産所得の確定申告期限に税務署に提出する。
(2)すでに不動産所得がある場合
受けようとする年の確定申告期限までに「減価償却方法の変更届出書」を税務署に提出する。 修繕の時期とその内容、費用をうまく組み合わせて高い節税効果をあげていきましょう。 以上が【修繕時期と税務上の扱い】です。
最近の住宅設備機器は日に日に便利になっていきます。こまめな修理修繕が入居者の満足につながり、経営を安定させいつか起こるであろう相続の時、残して喜ばれる財産になると思います。 費用の支出は必要ですが、いつ修理・修繕が必要になるのかを知り、かかる費用を準備して計画的に取り組んでいきたいものです。
情報提供
RE-Guide収益物件
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